電話一本で、どんな鍵のトラブルにも対応してくれる、頼れる出張鍵屋さん。彼らが乗るサービスカーは、さながら「走る鍵の救急病院」です。そのコンパクトな車内には、私たちの想像を超える、多種多様な専門工具や機材が、機能的に、そしてぎっしりと詰め込まれています。その秘密の道具箱の中身を、少しだけ覗いてみましょう。まず、鍵開け作業の主役となるのが、「ピッキングツール」のセットです。先端が様々な形状をした、細い針金のような「ピック」と、シリンダーに回転力をかけるための「テンションレンチ」。これらを駆使して、鍵穴内部のピンを一本一本揃えていく、まさに職人技の象徴です。ディンプルキーのような複雑な鍵に対応するための、特殊な電動ピッキングツールも常備されています。次に、鍵穴の中で鍵が折れてしまった際に活躍するのが、「鍵抜き工具」です。先端が釣り針状やギザギザ状になった、極細の工具を複数使い、折れた破片を巧みに引っ掛けて抜き取ります。その作業は、まるで精密な外科手術のようです。また、車のインロック開錠には、ドアの隙間から差し込む、細長いロッド状の工具や、エアバッグのように隙間を広げるためのポンプなどが使われます。そして、最も大掛かりな機材が、「キーマシン(合鍵複製機)」です。鍵を全て紛失してしまった場合でも、その場で鍵穴から新しい鍵を作成するために、このキーマシンは不可欠です。元の鍵がなくても、鍵穴の段差を読み取り、正確な鍵山を削り出すことができます。最近では、イモビライザー搭載の車の鍵に対応するため、ICチップの情報を車両に登録するための「コンピューター診断機(登録機)」も、必須の装備となっています。これらに加えて、交換用の、様々なメーカーや型番のシリンダーや錠前、ドアノブ。作業に必要な電動ドリルやリベッター、そして暗闇での作業を支える強力なライト。出張鍵屋さんのサービスカーは、ありとあらゆる鍵のトラブルを、その場で完結させるための、知恵と技術が凝縮された、まさに秘密基地なのです。
出張鍵屋さんのサービスカーに積まれた秘密道具