法外な料金を請求し、消費者を苦しめる悪質な鍵開け業者。その被害報告は後を絶たず、国民生活センターなどへの相談も多数寄せられています。これほど社会問題化しているにもかかわらず、なぜ、このような業者はなくならないのでしょうか。その背景には、いくつかの構造的な問題が潜んでいます。第一に、「消費者の心理的な弱みにつけ込みやすい」という、この業界の特殊性があります。鍵のトラブルは、多くの場合、深夜や早朝、あるいは悪天候の中といった、不便で精神的に追い詰められた状況で発生します。「一刻も早く家に入りたい」「早く車を動かしたい」という焦りから、消費者は料金の比較検討をじっくり行う余裕を失い、「すぐに来てくれる」という業者の言葉に飛びついてしまいがちです。この正常な判断がしにくい状況が、悪質業者の格好のターゲットとなるのです。第二に、「法規制の難しさ」が挙げられます。鍵開けというサービス自体は、多くの人々の助けとなる、社会的に必要なものです。そのため、料金設定を一律に規制することは困難です。悪質業者は、この法の隙間を突き、基本料金は安く設定しておきながら、様々な名目で「追加料金」を上乗せするという、巧妙な料金体系を用いています。契約書面上は、顧客が追加料金に同意した形を取ることが多く、後から「だまされた」と訴えても、法的に違法性を問うのが難しいケースが少なくないのです。第三に、「インターネット広告の匿名性」も、彼らが生き残る要因となっています。悪質な業者は、一つのウェブサイトの評判が悪くなると、すぐに別の名前で新しいサイトを立ち上げ、再び集客を行います。会社の所在地を明記していなかったり、連絡先が携帯電話の番号だけだったりするため、その実態を掴むのが非常に困難です。このように、消費者の弱み、法の不備、そしてインターネットの特性という三つの要素が複雑に絡み合い、悪質な鍵開け業者が、まるでモグラたたきのように、次から次へと現れては消えていくという、根絶の難しい状況を生み出してしまっているのです。
なぜ悪質な鍵開け業者がなくならないのか