サムターン回しという巧妙な手口に対して、絶大な効果を発揮する防犯サムターン。これを付けておけば、もう安心だと、つい考えてしまいがちです。しかし、どんなに優れた防犯設備にも、100%安全というものは存在しません。防犯サムターンにも、その種類によっては、知っておくべき「弱点」や、注意すべき点があるのです。その性能を過信し、他の防犯対策を怠ることは、かえって新たなリスクを生むことになりかねません。まず、最も普及している「スイッチ式(押しながら回すタイプ)」の弱点として考えられるのが、「慣れ」によるヒューマンエラーです。家族全員が、その操作に慣れていないと、急いでいる時などに、ボタンを押し込まずに中途半端に回してしまい、完全に施錠できていない「半ロック」状態になってしまう可能性があります。また、製品によっては、ボタンが小さく、力の弱い高齢者や子どもには、操作が難しい場合もあります。次に、「脱着式」サムターンの弱点です。防犯性は最も高い反面、その運用には手間が伴います。外出のたびに、つまみを外して保管する、という行為を面倒に感じてしまい、次第につけっぱなしになってしまっては、何の意味もありません。また、最も大きなリスクが、「外したつまみの紛失」です。もし、外したつまみをどこに置いたか忘れてしまったり、なくしてしまったりすると、家の中から鍵を開けることができなくなり、閉じ込められてしまう危険性があるのです。さらに、忘れてはならないのが、防犯サムターンは、あくまで「サムターン回し」という一つの手口に特化した対策である、という点です。ピッキングや、カムロック解錠、あるいはバールでのこじ開けといった、他の侵入方法に対しては、何の効果もありません。防犯サムターンを付けたからといって、防犯性の低い、古いギザギザの鍵を使い続けていては、玄関全体のセキュリティレベルは低いままです。真の防犯とは、一つの対策に頼りきることではなく、複数の防御策を組み合わせる「多重防御」の考え方が基本です。防犯サムターンの設置と合わせて、ピッキングに強いディンプルキーに交換する、補助錠を取り付けてワンドア・ツーロックにする、防犯カメラやセンサーライトを設置する。このように、様々な角度から対策を講じることで、初めて侵入者に対して「この家は、手強い」と思わせ、犯行を諦めさせることができるのです。