鍵穴に差し込んだ鍵が、びくともしない。回すことはできても、抜くことができない。そんな「鍵が抜けない」というトラブルは、ある日突然、誰の身にも起こりうるパニック案件です。焦って力ずくで引き抜こうとすれば、鍵が折れたり、鍵穴を壊してしまったりと、事態をさらに悪化させることになりかねません。専門業者を呼ぶ前に、まずは落ち着いて、自分で試せるいくつかの応急処置があります。まず、最も基本的で試すべきことは、「鍵を小刻みに動かしてみる」ことです。鍵を差し込んだまま、上下左右に、本当にわずかな範囲で、優しくガチャガチャと動かしてみてください。鍵穴内部のピンや部品が、何かの拍子に引っかかっている場合、この微妙な振動で、引っかかりが外れることがあります。この時、決して大きな力でこじ開けるように動かしてはいけません。あくまで、内部の部品を「なだめる」ようなイメージです。次に、鍵を回せる状態であれば、「施錠・開錠の方向に、ゆっくりと回しながら引き抜く」ことを試してみましょう。鍵を少しだけ回転させた、本来抜けるはずのない角度で、内部のピンの噛み合わせが偶然にも外れ、スッと抜けることがあります。これも、ゆっくりと、感触を確かめながら行うのがコツです。それでも抜けない場合は、鍵穴内部の潤滑不足や、ゴミの詰まりが考えられます。ここで役立つのが、「鍵穴専用の潤滑剤(パウダースプレー)」です。鍵と鍵穴の隙間に、ほんの少量スプレーし、鍵をゆっくりと抜き差しする(できる範囲で)ことで、潤滑剤を内部に行き渡らせます。一方で、絶対にやってはいけないNG行動があります。それは、「力ずくで引き抜く」こと、そして「市販の潤滑油(CRC-556など)を注入する」ことです。力任せに引けば、鍵が曲がったり、最悪の場合は鍵穴の中で折れてしまいます。油性の潤滑油は、内部のホコリを固めてしまい、さらに深刻な固着の原因となります。これらの応急処置を試しても鍵が抜けない場合は、それが自力で解決できる限界です。無理をせず、速やかにプロの鍵屋さんに助けを求めましょう。