ある日突然、あなたをパニックに陥れる「鍵が抜けない」というトラブル。しかし、その多くは、日頃のちょっとした心掛けや、簡単なメンテナンスで、未然に防ぐことができるものです。高額な修理費用や、無駄な時間を費やすことにならないよう、愛用の鍵と錠前を、健やかな状態に保つための、いくつかの重要な習慣をご紹介します。まず、最も簡単で、今すぐ始められるのが「鍵本体の清掃」です。私たちは、鍵をポケットやカバンの中に、他の物と一緒くたに入れています。そのため、鍵の溝には、ホコリや糸くず、皮脂などが、知らず知らずのうちに溜まっていきます。この汚れが、鍵穴内部に持ち込まれ、トラブルの原因となるのです。月に一度でも良いので、使い古しの歯ブラシなどを使って、鍵の溝を優しくブラッシングしてあげる習慣をつけましょう。これだけでも、錠前の寿命は大きく変わってきます。次に、「鍵穴の定期的なメンテナンス」です。鍵穴も、年に一、二回は掃除してあげましょう。掃除機で鍵穴のゴミを吸い出したり、パソコン用のエアダスターで内部のホコリを吹き飛ばしたりするのが効果的です。そして、掃除の後に、「鍵穴専用の潤滑剤(パウダースプレー)」を、ごく少量、鍵穴にスプレーします。この時、絶対に市販の油性潤滑剤は使わないでください。潤滑剤をスプレーした後は、鍵を数回、ゆっくりと抜き差しして、パウダーを内部全体に行き渡らせます。これにより、ピンの動きが驚くほどスムーズになります。また、「鍵の扱い方」そのものを見直すことも大切です。鍵を、栓抜きや缶のフタを開ける道具代わりに使うのは、もってのほか。ズボンの後ろポケットに入れて座るなど、鍵に無理な力がかかるような扱いも、変形の原因となります。鍵は、あくまで精密な錠前を操作するための、デリケートな道具であるという意識を持ちましょう。そして、もし、鍵の抜き差しに、少しでも違和感や引っかかりを感じたら、それを放置しないこと。それは、錠前が発している、初期のSOS信号です。その段階で専門家に点検を依頼すれば、簡単な調整や、安価な修理で済むことがほとんどです。日々の小さな愛情と気配りが、あなたの鍵と錠前を、予期せぬトラブルから守ってくれるのです。