あれは、終電もなくなった深夜1時過ぎのことでした。飲み会から帰宅し、自宅マンションのドアの前で鍵を探したのですが、どこにも見当たらない。酔いも手伝ってパニックになった私は、スマートフォンで「鍵開け 深夜」と検索し、一番上に表示された「スピード対応!3,000円~」という広告の業者に、藁にもすがる思いで電話をかけました。電話口の男性は、「すぐ向かえますよ」とだけ言い、料金の詳しい説明はほとんどありませんでした。三十分ほどで現れたのは、作業着というよりはラフな私服の、少し強面の若い男性でした。彼は、私の免許証を確認することもなく、すぐに作業に取り掛かりました。ピックと呼ばれる工具で数分いじっていましたが、「あー、これ、防犯性の高いディンプルキーなんで、ピッキングじゃ無理っすね。壊して開けるしかないです」と、一方的に言いました。そして、ドリルを取り出し、大きな音を立てて鍵穴を破壊し始めました。深夜のマンションに響き渡る轟音。私は、近所迷惑も気になり、ただただ呆然と立ち尽くすだけでした。ドアが開き、彼から手渡された請求書を見て、私は言葉を失いました。そこには、「基本料金3,000円」の他に、「深夜割増料金15,000円」「特殊工具使用料20,000円」「破壊開錠作業費30,000円」といった、意味不明な項目が並び、合計金額は、なんと「68,000円」と書かれていたのです。私が「話が違うじゃないですか!」と抗議すると、彼は急に態度を豹変させ、「いや、作業前に説明しましたよね?もう開けたんだから、払ってもらわないと困るんすよ。払えないなら警察呼びますか?」と、威圧的な口調で詰め寄ってきました。深夜、人気のない廊下で、大柄な男性にすごまれ、恐怖を感じた私は、結局、その場で言われるがままにクレジットカードで支払ってしまいました。後日、国民生活センターに相談しましたが、サインをしてしまった後では、返金は難しいとのこと。あの時、もっと冷静に、複数の業者を比較したり、高額請求された時点で警察を呼んだりする勇気があれば、と後悔しても後の祭りです。私のこの苦い経験が、誰かの被害を未然に防ぐための一助となることを、切に願っています。
私が遭遇した悪質鍵開け業者の恐怖体験