ピッポッパッと軽快に暗証番号を押すだけで開く、便利なテンキー式金庫。しかし、その利便性は、電気の力に依存しています。テンキー式金庫が開かない時、まず誰もが疑うのは「電池切れ」です。そして、多くの場合、それが正解です。しかし、電池を交換しても、あるいは非常用電源を使っても開かない場合、そこには電池切れ以外の、少し厄介な原因が潜んでいる可能性があります。考えられる原因の一つが、「基板の故障」です。テンキー部分や、内部のロック機構を制御している電子基板は、精密な電子部品の集合体です。湿気や、静電気、あるいは扉を強く閉めた際の衝撃などが原因で、基板上の回路がショートしたり、部品が破損したりすることがあります。こうなると、テンキーを押しても信号が正しく伝わらず、ロックは解除されません。基板の故障は、外から見ただけでは判断が難しく、専門家による診断が必要です。次に、「暗証番号の入力ミス」や「ロックアウト機能の作動」も考えられます。単純に、暗証番号を間違えて記憶しているケースはもちろんのこと、テンキーの特定のボタンが、経年劣化で反応しにくくなっていることもあります。また、多くのテンキー式金庫には、防犯のために、暗証番号を連続で間違えると、一定時間(数分から数時間)操作を受け付けなくなる「ロックアウト機能」が備わっています。焦って何度も番号を打ち込んでいるうちに、この機能が作動してしまっているのかもしれません。この場合は、しばらく時間をおいてから、再度正しい番号をゆっくりと入力してみる必要があります。さらに、物理的な「ソレノイドの故障」も原因となり得ます。ソレノイドとは、電気信号を受けて、施錠桿(カンヌキ)を動かすための電磁石部品です。このソレノイドが故障すると、たとえ正しい信号が送られても、カンヌキを物理的に動かすことができず、金庫は開きません。これらの電池切れ以外の原因は、いずれも個人での修理は極めて困難です。基板やソレノイドの交換には、専門的な知識と部品が必要となります。電池を交換しても開かない場合は、無理にこじ開けようとせず、購入したメーカーや、金庫専門の鍵屋さんに相談するのが、最も安全で確実な解決策と言えるでしょう。